弁護士山田尚史のコラム スポーツと法律⑨(eスポーツと景品表示法その1)

eスポーツと景品表示法 その1

最近よくニュース等で「eスポーツ」という言葉を耳にするようになりました。eスポーツとは、「electronic sports(エレクトロニックスポーツ)」の略であり、簡単にいうと、コンピューターゲームで対戦して勝敗を競うことです。ゲームのジャンルは問いません。日本では中でも格闘ゲーム等が人気を博しています。

eスポーツについては、特定のゲームタイトルごとに参加者を募り、優勝者など優秀な成績を収めた参加者が賞金を得ることができるという大会が開催され、盛り上がりを見せています。大会開催に伴い、金銭が動くことによってビジネスとなるのですが、日本では、eスポーツの大会開催に関し、様々な法規制が絡みます。このコラムでは、その法規制に関するお話をさせていただきます。今回は、まず、eスポーツと景品表示法という法律の関係について、説明をさせていただきます。

海外では賞金額が1億円を優に超える大会も珍しくありませんが、日本では、これまで、なかなか高額賞金の大会が開催されませんでした。その原因の一つが景品表示法という法律の存在です。

景品表示法では、商品やサービスに付随する景品が過大なものになることが規制されます。その趣旨は、消費者が景品に惑わされ、質の良くないものや割高なものを買わされてしまうおそれがある、または、過大景品による競争がエスカレートすると、事業者は、商品やサービスそのものでの競争に力を入れ無くなり、結果、消費者の不利益につながるおそれがあるため、そのようなことを防ぐことにあります。そして、景品表示法では、景品の価額の上限は、元商品の取引価額の20倍、もしくはその取引価額が10万円を超える場合には10万円と定められています(要するに景品の上限は10万円ということです)。

景品表示法とeスポーツがどう関係するかというと、eスポーツでは、ゲームメーカー等が、一般消費者が参加することのできるeスポーツの大会を開催し、その大会で高額な賞金を出すとした場合、一般消費者は、eスポーツ大会の賞金を獲得することを目指し、その大会のタイトルとなっているゲームソフトを購入(eスポーツ大会で好成績を収めるためには、そのゲームソフトを購入して練習しなければならないという前提)してしまうのではないか、ということが問題になるのです。つまり、景品表示法でいうと、eスポーツの大会の賞金が景品にあたり、ゲームソフトが商品に該当するのではないかということです。そして、eスポーツの大会の賞金が景品に該当する場合、上述の景品表示法の規制により、賞金は上限10万円とされてしまうのです。

eスポーツ

このような議論は机上の話に過ぎないのではないかと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、平成28年、ノーアクションレター制度(※1)を利用し、消費者庁に対し、eスポーツ大会で賞金を出すことが景品表示法の適用を受けるかどうかという照会がなされました。
そこでは、繰り返しプレイすることによりスキルが向上するゲームに関し、そのゲームのメーカーがプロモーションの一環としてeスポーツの大会を開催した場合、ゲームの購入等にお金を費やしていない者がその大会で優秀な成績をおさめて賞金を獲得する可能性が低いという前提条件のもと、ゲームメーカーが大会で賞金を提供することが、景品表示法の規制にかかるか否かという照会がなされました。これに対し、消費者庁は、上記前提条件でeスポーツの大会が開催された場合、大会で賞金を提供することは景品表示法の規制にかかるという回答をしたのです。消費者庁の回答は、一定の条件を前提とする話ではありましたが、これにより、日本でeスポーツの大会を開催しても賞金を10万円までしか出せないという話が広がり、なかなか日本では大きな賞金の大会が開催されないという状況が続きました。

もっとも、この話は、ゲームメーカーがeスポーツの大会の主催者となった場合に問題になることです。eスポーツの大会を、ゲームソフトを販売する立場にはないイベント運営会社等が開催するのであれば、その大会で賞金が提供されても、基本的に「賞金=景品」とみなされず、景品表示法の規制を受けません。とは言え、現実には、eスポーツの大会の開催にはゲームメーカーが関与することが多く、なかなか、高額賞金の大会が開催されなかったのでした(その2へつづく)。


(※1) ノーアクションレター制度(法令適用事前確認手続)とは、民間企業等が、その企業が行おうとするビジネス等が特定の法規制にかかるかどうか、あらかじめ、所管の行政機関に照会し、その行政機関から回答を得られるという制度です。ベンチャー企業が新しいビジネスを始める際などに、その事業に法的問題がないか等を確認するためによく利用されます。