交通事故シリーズ② 取引上の評価損(格落ち損害)について ~国産大衆車でも認められる?~

1 評価損(格落ち)とは?

「評価損」とは、修理してもなお外観や機能に欠陥が生じ(技術上の評価損)、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合に認められる損害です。 今回は、評価損のうち、取引上の評価損について紹介したいと思います。

2 取引上の評価損の考慮要素

取引上の評価損の有無及び額については、概ね以下の1~6の事情を考慮して決定されます。

  1. 損傷の内容・程度
  2. 修理の内容
  3. 修理費の額
  4. 初度登録からの経過期間
  5. 走行距離
  6. 車種

上記1~6の要件でいうと、高級車で走行距離も短く、登録年数もそれほど経過していない車両ほど認められる傾向にあります。国産大衆車の場合、高級車と比較すると認められにくい傾向にありますが、「国産大衆車」というだけで否定される訳ではありません。国産大衆車であっても、具体的な損傷・修理等の状況によっては「事故歴により商品価値の下落が見込まれる」のです。

3 損傷状況・修理の内容について

評価損の検討にあたって、損傷状況及び修理の内容を確認する必要があります。ここで参考となるのが、一般社団法人自動車公正取引協議会が定めている「自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則」です。同規約11条1では、中古車の販売にあたって「修復歴」を表示する義務があるとされています。そして、「修復歴」とは、「車体の骨格に当たる部位の修正及び交換歴」のことであり、同施行規則14条において、車体の骨格部位に当たる部位は以下のとおりとされています。

  • フレーム(サイドメンバー)
  • クロスメンバー
  • フロントインサイドパネル
  • ピラー(フロント、センター及びリア)
  • ダッシュパネル
  • ルーフパネル
  • フロアパネル
  • トランクフロアパネル

上記部位は、いずれも車体の剛性や乗員保護のために必要な車体の骨格部位であり、それらの部位に修正・交換が施された中古車については「修復歴」として表示する義務があるのです。そして、一般的に「修復歴」の表示のある車両は中古車市場において商品価値が下落すると考えられます。

従いまして、評価損の有無を検討するにあたっては、修理見積書の修理項目の内容(取替部品・作業内容等)を詳細に確認し、上記骨格部位が含まれていないかを検討することが必要となります。国産大衆車であっても、車体の骨格部位に損傷が波及しているケースであれば評価損は認められやすいといえます[※i]。逆に言いますと、車体の骨格部位に損傷が波及していない軽微な損傷のケースであれば、高級車で走行距離・初度登録からの経過年数が短いケースであっても評価損が認められにくいといえます。

4 評価損の額について

取引上の評価損の金額算定について、確立された具体的な基準はありません。裁判例では、修理費用の一定割合として認めるケースが多いと思います。その他の考え方として、事故当時の時価と修理後の時価の差額を損害とするものもあります。
また、日本自動車査定協会の減額証明書を参考にすることもあります。
修理費の一定割合の場合、事案(損傷状況・修理費額)によって様々ですが、修理費の10~30%とされるケースが多いと思います。

5 裁判例

裁判例では、走行距離4万7984㎞、初度登録から約4年経過、フロントピラーが損傷し修理費として約43万円を要するセレナハイウェイスターについて、修理費の1割の評価損を認定した事案(明石簡裁H26・9・25判決)や、走行距離3000㎞、初度登録から約3か月経過、リヤフレームが損傷し修理費として約55万円を要する国産大衆車(公表なし)について、修理費の1割の評価損を認定した事案(横浜地裁H22・12・27判決)があります。

6 以上より

以上より、評価損の請求を検討するにあたっては、上記1~6の要件、特に、損傷状況・修理内容を修理明細・見積書などで詳細に確認する必要があります。

(竹田大介)
(この記事は2022年7月に執筆したものです)


[※i] 修復歴の表示義務がある損傷のケースであっても、走行距離・初度登録からの経過年数の長さによっては認められません。