<連続シリーズ:第2回> 改正民法のいろは

~重要な変更が多数!保証債務に関する改正~

今回は、民法改正の目玉とも言うべき「保証債務」について取り上げます。 事業資金や奨学金などの金銭を借入れる時に限らず、家を借りる時、老人ホームへの入所時、入社時の身元保証など、私たちの生活の周りには、保証契約が溢れています。この記事を読んでくださっている方も、1つや2つ、何らかの保証人になった経験があるのではないでしょうか。

保証契約に関しては、「頼まれて安易に保証人になってしまった」、「名前を貸すだけで、実際に支払うことはないと聞いていた」、「聞いていたよりはるかに多額の請求が来て驚いた」などのトラブルが後を絶ちません。
こうしたトラブルを防ぐため、改正民法では、保証人になることのリスクや保証範囲を正確に認識した上で保証契約を締結できるよう、保証人保護のための規定が多く盛り込まれています。その中から、重要な3点についてご説明します。

Point1《「個人」が「事業性借入」を保証するときは、公正証書で意思確認を!》

改正民法では、事業のために負担する借入(事業性借入)について個人が保証する場合には、保証契約の締結前1か月以内に、公正証書で「保証債務を履行する意思」を確認しなければ、その保証契約は原則として無効となります。

個人による保証は、家族や友人に頼まれて安易に引き受けてしまうことが多い一方で、事業性借入は借入額が大きくなりがちであり、後に保証人が多額の請求を受け、破産を余儀なくされるケースも多く見受けられます。このため、事業性借入を個人保証する場合には、保証人となろうとする者自らが公証役場に出向いて、公証人の前で保証意思を示し、公正証書を作成するという過程を経ることで、慎重に意思確認をする機会を与えたものです。

なお、主債務者が法人である場合の経営者(取締役、執行役等)やオーナー(議決権の過半数を保有する株主)、個人事業者である主債務者の共同事業者・事業従事配偶者は、公正証書作成の手続きを経ることなく、保証人となることができます(いわゆる経営者保証の例外)。
借入の「事業」性や、どういった者がいわゆる「経営者」に該当するかの判断については、国から何らかの基準が示されることや、改正民法施行後の裁判例の蓄積が待たれるところです。どちらかわからない場合には、公正証書を作成しておいた方が安全といえるでしょう。

Point2 《主債務者及び債権者は、情報提供を忘れずに!》

改正民法では、事業のために負担する債務(貸金債務に限られない)を個人保証する場合には、主債務者から保証人に対し、
(1) 財産及び収支の状況
(2) 主債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
(3) 主債務について担保を提供するときはその事実及び担保提供の内容
について情報提供をしなければなりません。これを怠った場合、又は事実と異なる情報提供をしたために保証人が誤った事実を認識して保証契約を締結した場合に、債権者が情報提供義務違反を知り、又は知ることができたのであれば、保証人による保証契約の取り消しが認められています。改正民法施行後は、保証契約書に「本契約に先立ち、①~③の項目について情報提供を受けたことを確認する」などの確認規定を設けるのがよいでしょう。
この他にも、保証人から主債務の履行状況等について問い合わせがあった場合や、主債務の期限の利益が喪失した場合に、債権者から保証人に対する情報提供が義務付けられています。

主債務者の 情報提供義務 債権者の情報提供義務
時期 契約締結時 保証人からの請求時 主債務の期限の利益喪失から2か月以内
保証人の範囲 事業のために負担する債務について委託を受けた保証人(個人のみ) 委託を受けた保証人(個人・法人) 保証人(個人のみ、委託の有無を問わない)
情報の内容 主債務者の財産・収支・負債の状況等 主債務についての不履行の有無・残額等 主債務の期限の利益が喪失したこと
違反時の効果 債権者が義務違反について悪意又は有過失である場合に、保証人により取り消しが可能 規定なし 通知時までの遅延損害金相当額の保証履行の請求不可

Point3 《全ての種類の個人根保証に、極度額の設定を!》

債権者と主債務者との間で日々発生・増減・消滅する不特定の債務を保証することを、「根保証」といいます。現行民法では、個人による根保証のうち主債務が貸金等債務であるものに限定して、極度額(保証の上限額)を定めるよう規定していました。
改正民法では、貸金等債務に限らず、全ての個人根保証について極度額を定めなければならず、極度額の定めのない個人根保証は無効となります。
身近なところで言えば、家を借りる時に家族が保証人になる場合は個人根保証ですので、民法改正後は、極度額を定めなければ無効となります。他にも、継続的な売買や入社時の身元保証、フランチャイズ契約や代理店契約の際の保証人など、個人根保証として極度額を定めなければならないケースは多くあります。
債権者としては、どのような基準で極度額を定めるか慎重な検討を要するだけでなく、保証契約締結後は、債務額が極度額を超えないよう注意していく必要があります。

●● 今回の改正民法Pointのおさらい ●●

(1)事業性借入を個人保証する場合、契約締結前1か月以内に公正証書で意思確認を行わなければならない
⇒ 公正証書による意思確認がない場合、保証契約は無効
(2)事業に関する債務を個人保証する場合には、保証人に対し、主債務者の財産・収支・負債の状況等に関する情報を提供しなければならない
⇒ 怠った場合、債権者の認識によっては、保証契約を取消すことが可能
(3)主債務の種類を問わず、個人根保証の場合には極度額を定めなければならない
⇒ 極度額の定めがない場合、保証契約は無効

⇒次回は、「約款規定」について取り上げます。